体積濃度(溶液濃度)とは、全体量を体積単位で計測し、算出する濃度で、基本単位がL(リットル)の場合と立方メートルの場合がある。混合されている試料を計測する単位は、質量や物質量であることが多い。化学の場面において、ある濃度の水溶液を調整する場合、試料を正確な量測り取り、メスフラスコなどの器具を用いて正確な体積に希釈し調整することが多く、主な化学薬品なども体積モル濃度で示されるのが普通である。実験操作では主に溶液の体積測定が問題となるため、溶液の体積を基にした濃度方式は便利であり、最もよく使われる濃度単位である。
そのため、体積モル濃度mol/Lを、Mol (あるいはM) と表記し、「モーラー」(またはモル)と発音する場合がある。また、実験室レベルのごく少量の溶液を用いる場合は接頭辞のミリをあわせ(mmol ミリモル)単位を用いることが慣習となっている。Molという濃度単位は国際単位系 (SI) では認められておらず、将来的にはmol/Lに統一されるべきである。ただ、Mという表記は現在でも多くの学術誌で暫定的に使用が容認されており、現状では併用されている。また、計量法では従来使用が認められていた規定度から体積モル濃度に置き換える様に勧告している。
ここでも簡単のため、次の例を用いる。
例、メタノール32gを水で希釈し、100Lとした水溶液。(基本単位はリットルを用いる。)
質量/体積 [編集]
例より、100Lの溶液には32gの試料(メタノール)が混合していることが読み取れる。
上の節と同じように、一般的には単位体積あたりの濃度を示すのが普通である。つまり、基本単位であるLあたりの濃度を示すことである。
全体量を1Lと調整すると、0.32g/Lとなる。
なお、質量/体積濃度では、パーセント濃度が使われることは少ない。
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規定濃度 [編集]
規定濃度は、主に定量分析に用いられる単位体積(1L)に含まれるグラム当量数を表す濃度単位である。グラム当量数は反応物質の反応に要する物質量、酸塩基反応などの化学反応を1mol分の反応を完結させるために必要な物質の質量である。詳しくは化学当量を参照されたい。
質量/体積濃度に類似するが、それぞれの試料の種類によって、グラム当量が異なるため同質量でも、化学種によって規定濃度は異なる。
式では、規定濃度=グラム当量/体積 と表される。
物質量/体積(モル濃度) [編集]
体積モル濃度は上記の通り、最もよく使われる濃度であり、単にモル濃度といえば、この体積モル濃度を指す。
例において、体積モル濃度の求め方を示す。
例では、100Lの試料溶液には32gのメタノールが混合している。32gのメタノールの物質量は分子量から約1molと算出できる。
つまり、100Lの溶液には1molのメタノールが混合しており、1mol/100Lと濃度を示すことができる。
これを単位体積あたりの濃度に調節すると、0.01mol/Lとなり、体積モル濃度が求められる。
式で表すと、M=n/V (M=体積モル濃度、n=物質量、V=体積)である。
このように体積モル濃度は物質量を全体量の体積で除したものである。物質量は溶質の質量から分子量を使って求められるため、質量パーセント濃度などの一般的な濃度単位から体積モル濃度へ変換する場合、密度などから溶質の質量を算出した後、物質量を決定し、体積で割ることで変換できる。
仮に、密度1000g/Lである32%のメタノール水溶液が与えられた場合、1Lの水溶液に含まれるメタノールの質量は密度と質量パーセント濃度から320gと求められる。このときの物質量は分子量から10molと算出でき、それより体積モル濃度を10mol/Lと決定することができる。
式量濃度 [編集]
式量濃度は体積濃度の一つで、単位体積中に含まれる混合物のグラム式量数で定義され分析濃度や全濃度と呼ばれることもある。体積モル濃度に似るが、酸やなどの解離性の化学種や錯体形成反応など、溶液中で物質量が変化する場合ではこのような濃度が用いられる。
式量濃度は含まれる化学種すべての濃度の総和であり、化学種の平衡濃度(溶液中で化学反応が見かけ上起こらなくなった状態の濃度)を解離定数や溶解度定数などの平衡定数から簡単に求めることができる。詳しくは規定度なども参照されたい。
ここでは例として、解離性の化学種(A)32gを水で希釈し、100Lとした水溶液を用いる。なお、この化学種(A)の分子量は32であり、水溶液中で40%解離し、化学種(B)を生じるとする。
この化学種(A)の物質量は1molであり、式量濃度は体積モル濃度と同じように0.01mol/Lと算出できる。 ここで、水溶液中の体積モル濃度を式量濃度から求めることができる。
水中で化学種(A)は40%解離し化学種(B)を生じている。つまり、式量濃度(全濃度)0.01mol/Lの40%が化学種(B)の体積モル濃度である。つまり0.01×0.4=0.004mol/Lと簡単に計算できる。また同じように化学種(A)は60%存在するため、0.006mol/Lと求めることができる。
このように系の中に含まれる物質の式量濃度(全濃度)を求めることは、さらに複雑な解離、錯形成反応を起こす化学種のモル濃度を求める際にも非常に有用である。
モル分率 [編集]
モル分率は、全体量と混合試料ともに物質量を基準とし、算出する単位である。体積などのように温度に依存することがないため、物性の異なる多成分を含んだ系に使われることが多い。混合物の物質量/全体の物質量で表される。このため含まれるすべての物質のモル分率の総和や純物質のモル分率は1である。
ここでは次の例を用いる。
例、メタノール32gを水で希釈し、100gとした水溶液。
この溶液にはメタノールが32g(1mol)含まれる、全体量からの差から求めると、このとき水は68g含まれている。68gの水は分子量から求めると3.8molと算出できる。
つまり、このときこの溶液にはメタノール1molと水3.8mol、あわせて4.8molが含まれている。モル分率は混合物の物質量/全体の物質量であるから、メタノールを混合物とすると1mol/4.8molとおける。ここからモル分率は約0.21と算出できる。同じように、水のモル分率は約0.79となる。
力価(タイター) [編集]
溶液の濃度を表す単位として、力価というものが用いられることとなる。これは化学において主にmmol/Lの単位が主に慣習として用いられることから使用される単位である。
力価の単位は、それらと同じように単位体積あたりの質量であるが、基準となる試薬ととちょうど反応しあうだけの試薬の重量を示す。
簡単のため、次の例を用いる。
例、基準として5mgの水酸化ナトリウム試薬がある。これを塩酸溶液1mlで中和したとする。
このとき、塩酸水溶液1mlには5mgの水酸化ナトリウムを中和する力があると考えることができる。このことから、力価は基準となる水酸化ナトリウム試薬5mgを1mlで中和する塩酸の濃度と考えることができ、塩酸の濃度は水酸化ナトリウム力価5mg/mlと表すことができる。
力価はグラム当量に関係するため、規定度に容易に換算することができる。 二つを表す式を比較すると、力価=mg/ml 規定度=mg/ml×グラム当量 であり、すなわち 力価=規定度×グラム当量 である。
定量分析などにおいては、力価を正確に測定するため、いくつかの基準試薬(シュウ酸など)から何回かの滴定を行い決定する。
その他 [編集]
濃度のうち、体積は溶液の密度が混合比により変化したり、溶液の熱膨張により密度が変化する為、体積は正確な計量には使いにくい指標である。
物体の重さを量る場合、重力を計測した重量を用いる場合が多いので、正確には重量濃度であることが多い。しかし、同じ重力加速度の地点で成分の重量と混合物の重量とを計測するのが通常であるから、重量比と質量比は一致するはずであり、質量濃度(w/w)と重量濃度(w/w)とは等価であるとみなして良い。
一方、定量分析の滴定では試薬量を体積で測る場合が多い為に、全体量は体積とするが成分量は物質量で計った体積モル濃度(mol/L)や試薬のモル当量で計った規定濃度が利用される。前述の様に体積が持つ不確かさを相殺する為に、各測定実験毎に逆滴定で濃度のファクター(補正係数)を決定する必要がある。